「勤めている整骨院から独立して、自分の院を持ちたい」「開業するなら、保険の施術だけに頼らない院にしたい」――柔道整復師として整骨院(接骨院)の開業を考える方は少なくありません。整骨院の開業には、施術所の開設届や構造設備の基準など、法律で決められた手続きがあります。また、近年は保険の施術だけでは経営が厳しいという声も多く、開業の段階から自費メニューまで含めて計画しておくことが大切です。本記事では、整骨院の開業の流れ、施術所の開設届と構造設備の基準、受領委任の手続き、開業資金の内訳、保険と自費メニューの考え方、開業後の集患をまとめます。
この記事の結論
整骨院を開業するには、柔道整復師の免許を持ち、構造設備の基準(6.6㎡以上の専用の施術室、3.3㎡以上の待合室など)を満たす施術所を用意したうえで、開設後10日以内に施術所の開設届を出します。保険の施術を受領委任で取り扱う場合は、施術管理者の要件を満たし、地方厚生局への申出も必要です。広告できる内容は法律で決められているため、看板やチラシにも注意が必要です。開業後の経営を安定させるには、保険の施術に加えて、院の強みを生かした自費メニューを開業前から計画しておきましょう。
整骨院の開業の流れ
- 開業の計画:診療圏(立地)、ターゲット、保険と自費の割合、収支の計画を立てる
- 物件探し:施術所の構造設備の基準を満たせるか、看板を出せるかを確認する
- 資金の準備:自己資金と融資の計画を立てる
- 内装工事・設備の準備:施術室・待合室・消毒設備、施術ベッドや機器をそろえる
- 施術所の開設届:開設後10日以内に届け出る
- 受領委任の申出・税務の届出:保険の取り扱いの手続き、税務署への開業届など
- 集患の準備・開院:ホームページ、地図検索、内覧会などを準備する
施術所の開設届と構造設備の基準
柔道整復師法では、施術所を開設した人は、開設後10日以内に、開設の場所や業務に従事する柔道整復師の氏名などを、施術所の所在地の都道府県知事に届け出なければならないと定められています(柔道整復師法 第19条)。届出の窓口や必要書類は自治体によって異なるため、所在地の保健所などに事前に確認しましょう。
また、施術所の構造設備は、次の基準に適合している必要があります(柔道整復師法施行規則 第18条)。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 施術室 | 6.6平方メートル以上の専用の施術室があること |
| 待合室 | 3.3平方メートル以上の待合室があること |
| 換気 | 施術室は、室面積の7分の1以上に相当する部分を外気に開放できること(適当な換気装置があればよい) |
| 消毒設備 | 施術に用いる器具、手指などの消毒設備があること |
物件を契約する前に、間取りがこの基準を満たせるかを確認しておくと、内装工事のやり直しを防げます。自治体によっては、届出の前に保健所への事前相談や、開設後の立ち入り検査が行われる場合もあります。
保険の取り扱い(受領委任)の手続き
骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などの施術で療養費を受領委任の形で取り扱う場合は、施術所の開設とは別に、地方厚生局などへの申出が必要です。受領委任を取り扱う施術所の施術管理者になるには、一定期間の実務経験と、指定された研修の受講が求められます。勤務先にいるうちに、自分が要件を満たしているか、研修の日程とあわせて確認しておきましょう。
あわせて、個人で開業する場合は税務署への開業届(事業を始めた日から1か月以内)、青色申告をする場合は青色申告承認申請書を提出します。施術中の事故に備える保険も検討しておきましょう(賠償責任保険の選び方)。
開業資金の内訳
| 費用 | 主な内容 |
|---|---|
| 物件取得費 | 敷金・礼金・仲介手数料・前家賃 |
| 内装工事 | 施術室・待合室・受付・トイレ、換気・照明・空調、看板 |
| 設備・備品 | 施術ベッド、物理療法の機器、消毒設備、受付・会計まわり |
| レセプト・予約の仕組み | 療養費の請求ソフト、予約・顧客管理の仕組み |
| 集患 | ホームページ、地図検索の整備、チラシ、内覧会 |
| 運転資金 | 療養費の入金や患者数が安定するまでの家賃・人件費・生活費の数か月分 |
療養費は請求してから入金までに時間がかかるため、運転資金は余裕を持って準備しておくことが大切です。機器は購入だけでなく、ローン・リース・月額制などの形も比べましょう(機器のローン・リース・月額制の比較)。資金の考え方は開業資金の集め方、計画書は事業計画書の作り方も参考にしてください。
保険と自費メニューの考え方
保険の施術は、対象となる負傷の範囲が決まっており、慢性的な肩こりや疲れなどは対象になりません。負傷が治れば来院も終わるため、保険の施術だけでは、来院数と売上が安定しにくい面があります。開業の段階から、保険の施術と自費メニューの両方で院の柱をつくっておくと、経営が安定しやすくなります。
- 院の強みに合わせた自費メニュー:姿勢のケア、スポーツをする人のコンディショニング、産後の体のケアなど
- 施術者の手を使わない時間のメニュー:待ち時間や施術の前後に、横になって受けられる温熱のメニューなどを組み合わせる
- 通い続ける理由をつくる:負傷が治ったあとも、体のケアとして通えるメニューを用意する
- 料金と説明:保険の施術と自費メニューの違い、料金、所要時間を、患者さんに分かりやすく説明する
自費メニューの組み立て方と導入の手順は整骨院の経営と自費メニューで詳しく解説しています。
広告の制限と開業後の集患
柔道整復の業務や施術所については、柔道整復師である旨、施術所の名称・電話番号・所在地など、法律で認められた事項以外を広告することはできません(柔道整復師法 第24条)。看板やチラシに、効果や症状、料金の割引などを書くことはできないため、開院前に表示の内容を確認しておきましょう。広告の範囲でできる集患の方法は整骨院の集客|広告規制の範囲でできることで解説しています。
- 地図検索・ホームページ:地域で院を探す人に見つけてもらう(整骨院・鍼灸院のSEO・MEO対策)
- 紹介:通っている患者さんからの紹介は、信頼のある新規の入口になる(紹介で新規患者を増やすコツ)
- 地域とのつながり:近隣の企業やスポーツチーム、地域のイベントとの関係づくり
なお、自費メニューを美容やリラクゼーションとして案内する場合も、医療を連想させる表現や効果の断定は避けましょう。
よくある質問
Q. 整骨院を開業するには何が必要ですか?
A. 柔道整復師の免許と、構造設備の基準を満たす施術所が必要です。施術所を開設したら、開設後10日以内に、所在地の都道府県知事に届け出ます。保険の施術を受領委任で取り扱う場合は、施術管理者の要件を満たし、地方厚生局などへの申出も必要です。
Q. 施術所の広さに決まりはありますか?
A. 柔道整復師法施行規則で、6.6平方メートル以上の専用の施術室と、3.3平方メートル以上の待合室を設けることが定められています。施術室の換気や、器具・手指の消毒設備についての基準もあるため、物件を契約する前に確認しましょう。
Q. 開業してすぐに保険の施術を扱えますか?
A. 受領委任で療養費を取り扱うには、施術管理者になるための実務経験と研修の受講などの要件があり、地方厚生局などへの申出も必要です。勤務先にいるうちに要件と手続きの流れを確認しておくと、開業後の空白期間を減らせます。
Q. 開業資金はどのくらい準備すればいいですか?
A. 物件取得費、内装工事、設備・備品、請求や予約の仕組み、集患の費用に加えて、患者数や療養費の入金が安定するまでの運転資金が必要です。療養費は入金までに時間がかかるため、運転資金は余裕を持って見込んでおきましょう。
Q. 自費メニューは開業時から用意したほうがいいですか?
A. 保険の施術だけでは来院数と売上が安定しにくいため、開業の計画段階から自費メニューも考えておくのがおすすめです。院の強みに合わせたメニューや、施術者の手を使わずに提供できるメニューを組み合わせると、無理なく続けられます。
まとめ
整骨院の開業は、柔道整復師の免許を持ち、構造設備の基準を満たす施術所を用意して、開設後10日以内に施術所の開設届を出すところから始まります。保険の施術を受領委任で扱う場合は施術管理者の要件と申出の手続きも必要です。広告できる内容は法律で決められているため、看板やチラシの表示にも注意しましょう。開業後に経営を安定させるには、保険の施術に加えて、院の強みを生かした自費メニューを開業前から計画しておくことが大切です。