近年、個人によるM&A(企業買収)が増加しています。これは少額の資金で会社を買えるマッチングサイトの普及により、500万円程度用意できれば個人M&Aが可能になったためです。しかし、会社を買うプロセスや具体的な手順がわからない方も多いでしょう。この記事では、個人M&Aの流れ、メリット・デメリット、成功のポイントについて解説します。
個人で行う小規模M&Aの概要
個人M&Aとは
個人M&Aは、個人が買い手となる小規模な企業買収のことを指します。一般的なM&Aと同様に、仲介会社などを利用してマッチングを行います。小規模な会社であれば、数十万円〜数百万円程度で買収が可能です。動く金額が少額のため、「スモールM&A」「マイクロM&A」とも呼ばれます。
個人が支払える額でも会社は買収可能
会社の価値は様々で、数十万〜数千万円と幅広く設定されています。少ない従業員で売上高も低い会社であれば、買収コストもそれほどかかりません。特に一つの店舗を営むような会社は少額になりやすい傾向があります。
個人によるM&Aが増えている背景
後継者不在の個人事業主
少子化や価値観の多様化により、親族が事業承継を拒否するケースが増えています。その結果、個人事業主がM&Aを利用するようになりました。
事業拡大を目指す法人や起業志望者
サラリーマンが起業する際に、ゼロから起業するよりも既存の個人事業を買う方が時間やコスト、リスクを軽減できます。
個人事業M&Aを考えて起業する人
特に情報系のWebサイト運営者などは、ネットを利用した事業のため、売却対象としても相性が良く、マッチングサイトに多く登録されています。
個人M&Aの費用とその内訳
基本的な費用
企業価値の評価費用
買収対象企業の価値を専門家に評価してもらうための費用です。
法律・税務関連の費用
契約書作成や法的問題の解決、税務処理にかかる費用です。
隠れたコスト
経営改善のための投資費用
新たな設備の導入や人材の採用など、企業成長のための投資費用が必要です。
予期せぬトラブルに伴う費用
訴訟費用や補修費用など、買収後に発生する可能性のある予期せぬトラブルに伴う費用です。
費用を抑えるための戦略
事前のリスク評価
想定外のコストが発生する可能性を最小限に抑えるために、事前にリスクを評価します。
専門家の助けを借りる
適切な価格設定や法律・税務関連の問題を解決するために専門家の助けを借りることも重要です。
個人がM&Aをしやすい業種
個人M&Aでおすすめの業種は以下の通りです:
飲食店
エステサロン
塾や予備校
Webサービス
介護事業
これらの業種は取引金額が300~500万円と少額であり、マッチングサイトに多く登録されています。
個人M&Aのメリット・デメリット
メリット
事業立ち上げのコストを削減
すでに揃った状態で事業を引き継げるため、時間やコストを抑えられます。
ノウハウや従業員を引き継げる
既存のノウハウや従業員を引き継げるため、スムーズな事業運営が可能です。
役員報酬を得られる
収益を上げることができれば、役員報酬を得ることができます。
不労所得の可能性
利益が出る会社を購入できれば、不労所得を得ることも可能です。
売却の可能性
買収した企業を大きくできれば、将来的に売却して売却益を得ることが可能です。
デメリット
人材や顧客の離脱リスク
経営者が変わることで、従業員や顧客、取引先が離れる恐れがあります。
簿外債務のリスク
帳簿に載らない債務を引き継ぐ可能性があります。外部専門家によるデューデリジェンスが重要です。
少額案件の売上や利益の少なさ
M&Aの予算が少ない場合、売上や利益が少ない案件が多くなることを覚悟しましょう。
個人M&Aと自分で起業することの違い
既存の製品やサービス
起業する場合、提供する製品やサービスの需要が少ないと会社が潰れてしまうリスクがありますが、M&Aで既存の事業を買収すれば、このリスクを軽減できます。
黒字企業の収益
黒字企業を買えば、購入直後から収益が発生します。心理的にも楽に感じるでしょう。
個人でできる小規模なM&A案件の探し方と流れ
M&Aマッチングサイトを利用する
インターネット上でM&Aの買い手と売り手をつなげるサービスを利用します。手軽にM&Aが行え、取引相手も自分で見つけられますが、サポートが少ないため注意が必要です。
事業承継・引き継ぎ支援センターを利用する
各都道府県に配置された公共機関で、専門家に無料で相談できるため、個人M&Aを考えている人におすすめです。
M&A仲介会社に依頼する
M&A仲介会社は専門知識を持ち、サポートを受けられるため安心ですが、報酬体系に注意が必要です。
友人や知人を通して探す
親族や知人から紹介してもらう方法もありますが、希望条件に合う売り案件を探すのは難しいかもしれません。
日本政策金融公庫 事業承継マッチング支援を利用する
無料で利用でき、売り手を探すのに適しています。融資制度もあるため、資金が不安な場合は相談しましょう。
銀行に相談する
M&A専門の部署を設ける銀行が増えています。融資を受けやすいメリットがある反面、仲介手数料が高くなる可能性があるため、事前に確認しましょう。
個人M&Aを成功させる3つのポイント
従業員と信頼関係を築く
経営者の変更に不安を抱く従業員との関係をスムーズにするため、面談の機会を設けるなどの努力が必要です。
デューデリジェンスを徹底する
簿外債務やトラブルを避けるために専門家による入念な調査が必要です。
M&Aの専門家に相談する
マッチングサイトを利用する場合でも、M&A仲介会社やアドバイザリーを利用することで、トラブルを避けることができます。
個人M&Aの事例と学べるポイント
成功事例
地域の小売店を買収し、店舗の改装と商品ラインナップの見直しで利益を大幅に上げたケースがあります。事業内容の適切な理解と改善策の効果的な実行が成功の鍵でした。
失敗事例
ITスタートアップを買収したが、技術的な問題と人材流出で失敗したケースがあります。テクノロジーの理解不足と人材管理のミスが原因でした。
事例から学ぶ成功要因
業務内容の深い理解と人材管理の重視が、個人M&Aの成功に欠かせない要素です。