個人事業主として事業を行っている方にとって、事業の終了や廃業は避けて通れない場面かもしれません。廃業を決意した際には、法的な手続きとして「廃業届」の提出が必要となります。このブログでは、廃業届の書き方、必要な手続き、提出方法などをわかりやすく解説します。廃業を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
廃業届とは
廃業届とは、個人事業主が事業を終了し、営業活動を停止することを税務署に通知する書類です。個人事業主が事業を廃業する際、法的な手続きの一環として提出が求められます。
廃業届を提出することで、事業主は税務署に対して事業の終了を公にすることができます。また、税金の支払い義務やその他の法的な責任を整理するためにも、廃業届の提出は重要です。
廃業にあたって必要な手続き
個人事業主が廃業する際には、法人とは異なり解散や清算の手続きは不要です。しかし、廃業したことを国や都道府県に通知しないと、納税義務や徴収義務が解除されず、税金に関する問題が発生する可能性があります。
ここでは、廃業にあたって必要な手続きを2つのステップで紹介します。
1. 廃業手続きに必要な書類をそろえる
廃業手続きには、まず必要な書類をそろえることが不可欠です。以下に、廃業手続きに必要な書類とその対象者を表で示します。
| 必要書類 | 対象者 | 備考 |
|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | 全員 | 国税庁のWebサイトで入手可能 |
| 事業廃止届出手続 | 個人事業税を納めている事業者 | |
| 青色申告の取りやめ届出書 | 青色申告をしている事業者 | |
| 消費税の事業廃止届出書 | 消費税を支払っている事業者 | |
| 所得税および復興特別所得税の予定納税額の減額申請書 | 予定納税をしている事業者 | |
| 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書 | 従業員への給与支払いを行っていた事業者 | |
| 本人確認書類 | 全員 | マイナンバーカードを持っていない場合は、2種類の書類を準備する必要があります。 |
マイナンバーカードを持っていない場合は、以下の①と②からそれぞれ1つをコピーして提出しましょう。
① マイナンバーを確認するための書類:
- マイナンバー通知カード
- マイナンバーが記載された住民票の写し
- マイナンバーが記載された住民票記載事項証明書
② 本人確認のための書類:
- 運転免許証
- 公的医療保険の被保険者証
- パスポート
- 身体障害者手帳
- 在留カード
2. 必要書類を提出する
書類の準備が整ったら、次は提出です。提出方法は以下の3つから選択できます。
税務署の窓口へ持参する
税務署の窓口へ直接持参する方法です。窓口の受付時間は平日8時半~17時まで。時間外でも税務署に設置されている時間外収受箱に投函すれば受理されます。窓口で受理を確認でき、疑問があればその場で質問できるのがメリットです。
税務署宛に郵送する
管轄の税務署に必要書類を郵送します。配達記録が確認できるレターパックや簡易書留を利用すると安心です。郵送なので税務署まで足を運ぶ必要がなく、手間を省けますが、書類の漏れがあった場合は再送が必要です。
e-Taxを利用する
パソコンからe-Taxソフトで届出書を作成し、オンラインで提出できます。オンラインで提出が完結するので、手間がほとんどかかりません。ただし、パソコン操作が苦手な方には向かないかもしれません。
以上が廃業手続きに必要な書類と提出方法の概要です。次に、具体的な廃業届の書き方を詳しく解説します。
廃業届の書き方
廃業届は大きく2つのブロックに分かれており、上のブロックには個人事業主の個人情報、下のブロックには廃業する事業の詳細を記入します。以下に、廃業届の各項目ごとの記載内容と注意点を解説します。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 届出名称:「個人事業の開業・廃業等届出書」 | 「開業届」の部分に二重線を引く |
| 税務署名 | 事業の納税地を管轄する税務署 |
| 提出年月日 | 税務署に廃業届を提出する年月日 |
| 納税地 | 開業届の提出時に納税地とした住所(郵便番号、住所、電話番号の記載が必須) |
| 上記以外の住所等 | 上記の納税地以外に事業所がある場合は、その住所を記入 |
| 氏名・生年月日 | 廃業する個人事業主の氏名と生年月日 |
| 個人番号 | 廃業する個人事業主のマイナンバー |
| 職業・屋号 | 開業届や確定申告で記載していた職業(屋号を持っている場合は、屋号も記入) |
| 届出の区分 | 廃業の箇所を丸で囲む(事由の欄には廃業する理由を記入) |
| 所得の種類 | 廃業する事業の所得の種類を丸で囲む |
| 開業・廃業等日 | 事業を廃業した年月日 |
| 事業所等を新増設、移転、廃止した場合 | 空白(個人事業を廃業する場合は記入する必要なし) |
| 廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合 | 法人名や代表者、法人の納税地や設立登記の年月日(法人設立により個人事業主を廃業する場合は記入が必要) |
| 開業・廃業に伴う届出書の提出の有無 | 有または無(青色申告の取りやめ届出書を提出する、または消費税の支払いをしている課税事業者は「有」を囲む。白色申告をしている、または消費税の支払いが不要だった場合は「無」を囲む) |
| 事業の概要 | 個人事業として実施していた事業の内容 |
| 給与等の支払の状況 | 雇用人数、給与形態、税額の有無(個人事業主として従業員を雇用していた場合は記入が必要) |
以上が廃業届の書き方の基本です。次に、廃業届を提出しない場合のリスクやよくある質問について解説します。
廃業届を提出した後の手続き
廃業届を提出した後も、個人事業主にはいくつかの手続きが残っています。ここでは、廃業後に必要な手続きを解説します。
1. 確定申告
事業を廃業した年度の確定申告は、通常の確定申告期間(翌年の2月16日から3月15日)に行います。廃業した年度の所得を申告し、所得税を確定させるための重要な手続きです。特に、青色申告をしていた場合は、帳簿の整理や損益計算などが必要となります。
2. 消費税の申告
消費税の課税事業者であった場合、廃業年度の消費税の申告も必要です。消費税の申告期限は、原則として確定申告と同じく翌年の3月31日までです。
3. 社会保険や労働保険の手続き
従業員を雇用していた場合、社会保険(健康保険、厚生年金保険)の資格喪失手続きや労働保険(雇用保険、労災保険)の事業廃止手続きが必要です。これらの手続きは、管轄の社会保険事務所や労働基準監督署で行います。
廃業後の注意点
廃業後も、いくつかの点に注意が必要です。ここでは、廃業後に気をつけるべきポイントを紹介します。
1. 税務署からの問い合わせ
廃業後も税務署から問い合わせが来ることがあります。特に、申告内容に誤りがあった場合や、追加の書類提出が必要な場合などです。税務署からの通知には迅速に対応するようにしましょう。
2. 残存資産の管理
事業を廃業しても、残った資産や設備の管理が必要です。売却や処分の際には、適切な手続きを行いましょう。また、廃業後に残った在庫や設備を売却する場合は、その所得も申告する必要があります。
3. 債権債務の整理
廃業後も、未回収の売掛金や未払いの買掛金がある場合は、債権債務の整理が必要です。これらは、事業終了後も法的な義務として残るため、適切に処理しましょう。
廃業届に関する追加情報
ここでは、廃業届に関するいくつかの追加情報を紹介します。
1. 廃業届の再提出
廃業届を提出した後に申告内容に誤りがあった場合や、事業を再開したい場合は、再度廃業届や開業届を提出することができます。ただし、再提出には税務署の指示に従う必要があります。
2. 廃業届の保管
廃業届の控えは、5年間保管しておくことが推奨されます。税務署からの問い合わせや、再度開業する場合などに必要となることがあります。
3. 専門家への相談
廃業手続きやその後の処理には専門的な知識が必要な場合があります。税理士や行政書士などの専門家に相談することで、スムーズに手続きを進めることができます。
まとめ
廃業届の提出は、個人事業主が事業を終了する際に不可欠な手続きです。廃業届を提出することで、法的な責任を整理し、税務署に事業終了を公にすることができます。廃業手続きには、必要な書類をそろえ、適切な方法で提出することが重要です。また、廃業後も確定申告や消費税の申告、社会保険や労働保険の手続きなど、いくつかの手続きが必要です。
廃業を考えている方は、この記事を参考にして、正確かつ迅速に手続きを進めましょう。廃業手続きに不安がある場合は、税務署や専門家に相談することをおすすめします。