学生時代に自らのビジネスを立ち上げる「学生起業」は、近年ますます注目されているトレンドです。高校や大学に在学中に起業して成功を収め、若手経営者として活躍する人々も少なくありません。本記事では、学生起業の基本的なやり方や成功事例、失敗しないためのポイントについて詳しく解説していきます。
学生起業とは
学生起業とは、学生が自らのビジネスを立ち上げることを指します。近年は、学生のうちに起業して成功を収める人も増えており、「好きな分野で自分なりのビジネスを起こしたい」「会社員になるよりも起業して成功し、年収を増やしたい」と考える学生が増えています。特に、設備費用や人材費があまりかからないIT関連のビジネスが人気です。
学生起業の成功率
学生起業の成功率に関する明確な数値はありませんが、中小企業庁の「2017年版中小企業白書」によると、起業後の企業生存率は81.7%とされています。つまり、約18.3%は事業を続けられず廃業していると考えられます。起業に失敗した場合、借金が残るリスクもあるため、資金管理をきちんと行い、万が一のことが起こっても対処できる体制を整えておくことが重要です。
学生起業の成功事例
起業する業種に迷ったときは、過去の成功事例を参考にするのもおすすめです。以下に有名な成功事例をいくつか紹介します。
成功事例① 株式会社リブセンス
株式会社リブセンスは、早稲田大学1年生だった村山太一氏が2006年に設立した会社です。求人サイト「ジョブサイト」を運営しており、事業開始当初は「求人に応募があったときに料金が発生する」仕組みでしたが、売れ行きが伸び悩みました。しかし、「採用したときに料金が発生する」仕組みに変えたところ人気を博し、創業から5年後に年商10億円を突破しました。
成功事例② 株式会社Candle
金靖征氏が東京大学在学時に設立した会社です。女性向けのWebメディア「MARBLE」で美容やライフスタイルに関する情報を発信するほか、人気モデルが登場する動画サイト「MimiTV」でメイクやヘアアレンジのやり方を配信し、人気を集めました。2016年に12.5億円で同社を売却したことから、金靖氏は若手起業家として注目されるようになりました。
成功事例③ 株式会社PoliPoli
伊藤和真氏が慶應義塾大学在学中に設立した、市民と政治家がコミュニケーションを取れる政治系SNSアプリを運営する会社です。神奈川県と連携し、トークルームで行政への意見を集める取り組みを実施するなど、自治体とのつながりが注目されています。2019年には、6,000万円の資金調達に成功しました。
成功事例④ 株式会社Gunosy
福島良典氏が東京大学在学中に設立したニュースキュレーションサービスの提供会社です。ニュースの配信だけでなく、ユーザーの興味に連動した広告最適化が高く評価され、2017年には東証1部に上場を果たしました。
成功事例⑤ dely株式会社
堀江裕介氏が慶應大学在学中に起業した、料理動画サイト「クラシル」の運営会社です。テキストでなく動画で分かりやすくまとめられた料理レシピが評価され、再生数は月間1億7,000万回を記録しました。同社は2018年にヤフーが93億円で買収しています。
成功事例⑥ 株式会社Progate
加藤將倫氏が東京大学在学中に設立した、プログラミング初心者向けのプラットフォームを運営する会社です。丁寧なスライド解説と環境構築を必要としない学習環境がプログラミング初心者の間で人気を集め、創業から4年でユーザー数60万人を突破しました。
学生起業のやり方
学生のうちに起業したいと思っても、具体的なやり方が分からず困っている方も多いでしょう。基本的な学生起業のやり方は、以下の通りです。
起業のアイデアをまとめる
斬新なアイデアを持って起業した経営者は、革新的なイノベーションを生み出し、成功を掴めることが多いです。既存のビジネスアイデアにならって起業する方法もありますが、競合者が多くなり成功率が下がるため、独自のアイデアは起業に際して必要不可欠だといえるでしょう。起業のアイデアは、まず身近なところから探してみるのがおすすめです。興味のある分野や不便に感じていることなどを掛け合わせてアイデアを練ってみてください。例えばIT分野が得意である場合、「IT×○○」といったように他のものを掛け合わせるのもひとつの方法です。また、インターンやセミナーに参加し、起業家志望の学生と話していく中でアイデアを生み出せる場合もあります。
事業計画書を作成する
事業計画書は、事業の戦略や内容などを具体的に説明するための書類を指します。頭の中で描いている事業のアイデアを明確化し、他者に示すために欠かせないものです。また、金融機関から融資を受けるときや、事業に仲間を誘うときにも、事業計画書があれば何をやりたいのか相手に理解してもらいやすくなります。なお、事業計画書には決まったフォーマットはありません。主に下記の内容を記載するのが基本です。
- 事業のビジョンや内容
- サービス・商品の強み
- 市場の環境
- 競合の情勢
- マーケティング戦略
- 生産方法
- 売上計画
- 利益計画
- 資金調達計画
ヒト・モノ・カネの準備をする
起業には、「ヒト・モノ・カネ」の3つの要素が必要です。これらは事業の成功に欠かせない経営資源であり、特に学生起業では効率的な準備が求められます。
まず「ヒト」についてです。学生起業家は、学内や学生起業家のネットワークから協力者を募ることが可能です。専門スキルを持った人が必要な場合は、クラウドソーシングを活用するのも一つの手です。クラウドソーシングプラットフォームを通じて、プロジェクト単位で専門家に業務を依頼できます。
次に「モノ」について。学生の場合、学校の設備を利用することで初期費用を大幅に削減できます。パソコンルームや教室など、学校が提供するリソースを最大限に活用しましょう。また、クラウドサービスを利用することで、物理的な設備投資を抑えることができます。
最後に「カネ」についてです。資金調達は学生起業の大きな課題の一つですが、近年ではクラウドファンディングやビジネスコンテストの賞金など、様々な方法で資金を集めることができます。アルバイトやインターンシップで自己資金を貯めるのも一つの方法ですし、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの資金調達を検討することも可能です。
開業の手続きをする
事業を正式に始めるためには、法的な手続きを行う必要があります。学生起業家は「個人事業主」として開業するか、「法人」を設立するかを選択できます。
個人事業主として開業する場合、税務署に「個人事業の開始届出書」を提出する必要があります。また、青色申告を希望する場合は「青色申告承認申請書」も提出する必要があります。これにより、税務上の優遇を受けることができます。
法人を設立する場合は、まず定款を作成し、公証人役場で認証を受ける必要があります。その後、法務局で会社設立の登記を行います。法人設立には一定の費用がかかるため、資金計画をしっかりと立てておくことが重要です。
事業をスタートする
必要な準備が整ったら、いよいよ事業をスタートします。商品やサービスの提供を開始し、顧客を獲得していきましょう。事業開始直後は試行錯誤が続くことが多いため、柔軟な対応と迅速な改善が求められます。
また、事業を進める中で税務申告や書類の提出など、公的な手続きも忘れずに行うようにしましょう。特に学生起業家は学業との両立が求められるため、効率的に時間を管理することが重要です。
学生起業のメリット
学生起業には多くのメリットがあります。まず、学校の設備やリソースを活用できるため、初期投資を抑えられる点が挙げられます。また、失敗しても就職活動で起業経験が評価されることが多く、リスクが比較的少ない点も魅力です。
さらに、学生は自由な時間が多く、体力もあるため、起業に全力を注ぎやすいです。社会的に未熟と捉えられることが多い学生ですが、その分「若者を育てたい」と考える支援者からのサポートを得やすいという利点もあります。
学生起業のデメリット
一方で、学生起業にはデメリットも存在します。まず、学業との両立が難しい場合があります。特に事業が軌道に乗るまでは、多くの時間とエネルギーを割く必要があるため、学業がおろそかになることがあります。
また、資金調達が難しい点もデメリットです。学生は社会的信用が低いため、金融機関からの融資を受けにくいことがあります。そのため、クラウドファンディングやビジネスコンテストでの資金調達を検討する必要があります。
最後に、友人と過ごす時間が限られる可能性があります。起業に全力を注ぐためには、友人との時間を犠牲にすることもあるでしょう。しかし、効率的に時間を管理することで、友人との時間も確保できるよう工夫することが大切です。
まとめ
学生起業は、多くのチャレンジと可能性が詰まった選択肢です。成功事例から学び、しっかりとした事業計画を立てることで、リスクを最小限に抑えながら起業を進めることができます。メリットとデメリットを理解し、適切な準備と計画を持って挑戦することが、成功への鍵となるでしょう。学生のうちに起業することで得られる経験や知識は、今後のキャリアにおいても大きな財産となります。未知の可能性に向けて、一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。